14歳、夏、僕。

 

光はしばらくポカンとしていたがすぐイチゴのように赤くなった。

正直、自分でもこんな事を言い出すとは思っていなかった。

なに言ってるんだって感じだけど本当なんだ。

ただ、急に、この紅色の暗くなっていく空を見ていたらなんだか切なくなって、無性にひかりに触れたくなった。

やっぱりこういうことは聞かないものかな、とかいう質問が頭をよぎったけど口にだしてしまったのでただひかりの返事を待つことにした。

「まーくんは...」

「え?」

ひかりが消え入りそうな声で俺の名前を呼んだ。

聞こえないのでそっとひかりとの距離を縮める。

「まーくんは、キス、したい?」

今度ははっきり聞こえる。

ひかりは赤くなりながらもちゃんと僕のことを見てきた。

「...うん」

今思うとかなり恥ずかしいが僕は正直に答えた。

ひかりはちょっと目を泳がせてそれからはっきりと言った。

「うん、私も」

その瞬間僕の体温が一気に上昇したと思う。

自分で言ったことなのにいざとなるとすっごくどきどきしてる。

両手を前に伸ばしてひかりの手を握るとちょっと冷たくなっている。

僕も、手が冷たいのに体は火が出そうな感じ。

ぎゅっと握るとひかりも握り返しながら目を瞑った。

心臓が痛いほどなっている。

僕はそっと顔を近づける。

まるで永遠を肌で感じたような、時が止まっているかのような不思議な感覚にとらわれながら、そっと近づいて唇が触れる寸前、僕は目を閉じた。

 

家に帰るとすでに夕食の準備が出来ていた。

今日はひかりの家族も早い日でひかりを家に送った後火照った頬を生ぬるい風で覚ましながら帰宅した。

結局あのあと僕たちは一言もしゃべらなかった。

まだどきどきしていたけど顔は赤くないことを確認してからなるべく平然をよそって母に帰ったことを報告する。

「お帰り、うがいしておいで」

という母の声にもう小学生じゃないんだから、と心の中で反発しつつもすでに習慣になっているので逆らえず洗面所に向かう。

うがい用のコップに水とうがい薬をいれ口に含む瞬間鏡に映った自分を見て手を止める。

このときなにを思ったのか、僕は自分の唇をペロッとなめてみた。

かすかに甘い生クリームの味がして、僕はまた赤くなった...

 

 

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