13歳、夏、僕。
朝目がさめた時、一番にすること。
カレンダーのチェック。
ひかりと付き合いだして僕ははじめて知った。
彼女があまりにも日にちに無頓着なことを。
そして数字を覚えるのが極端にだめだということを。
数学が苦手なのは昔から知っていた。
九九がいまだパッとでてこないのも単に数学が苦手なのだと思っていたから気にもしていなかった。
が、実際は数学が苦手なのではなく数字が苦手だったのだ。
まあ、結果は同じことなのだが。
そしていつの間にか身についた習慣がこの毎朝カレンダーチェックだったのだ。
そして今日、僕とひかりが付き合いだしてちょうど一年になった。
特別なにかする予定はないけどどうせだからちょっと寄り道を考えていたりする。
ちょっと前にひかりがケーキ屋に一緒に付き合って欲しいとか言っていたから今日は特別って事でついて行ってあげようと思っている。
考え事をしながら準備していたらいつの間にか、家をでなきゃ遅刻してしまう時間になっていた。
今朝母さんが作っておいてくれていたであろうサンドイッチを何個かつかんで家を飛び出した。
ぎりぎり学校に着き靴を上履きに替え僕は教室へと直行した。
教室に入ったとたん僕の耳に入ったのはひかりと持田あゆの話し声だった。
ひかりの席はちょうど僕が入ってきた扉の側にあるので聞こうとしなくても耳に入ってくるのである。
はっきり何を話しているのかは分からなかったがなにやら僕とひかりのことらしい。
これ以上立ち聞きしているような感じになるのは嫌だったので僕からひかりと持田に話しかけた。
「おはよー」
「あ、おはよー小林君、あ、今小林君とひかりって付き合ってるのーって聞いてたんだ」
あいかわらず直球な持田。
「うん、まあそういうことだから」
なにくわぬ返事をした後僕はひかりに視線を向ける。
「おはよ、ひかり」
何を考えていたのかはっとしながら顔をあげ、
「あっおはよー、まー...ことくん」
と気のぬけた返事をしてきた。
具合でも悪いのかと聞こうとした時にちょうど僕達の担任が元気よく教室に入ってきた。
放課後、僕は荷造りに一番時間のかかるひかりを待っていた。
今残っているのはほとんど小学校の同級生ですでに冷やかしてくるやつはいなかった。
僕が待っていることにプレッシャーでも感じているのかひかりが急ごうとするが、いそごうとするほどもたついてしまっている。
仕方ないのでひかりに近づいて手伝ってあげる。
「急がなくていいから、ていうか何で本をかばんに入れるだけなのにそんなにかかるの」
と声をかけながら教科書を無造作に入れようとすると、
「だめ!そう入れるとぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ」
と喝が入る。
ああ、そういう事と俺は一人で納得しながら何とか全部入れ終わり僕達はやっとのこと、クラスを後にした。